ピルを飲むとカンジダ症を繰り返してしまうという人が一定数いることが確認されています。
その原因は、ピルを服用することで体内のホルモンバランスが変化し、膣内の自浄作用がうまくいかずカンジダ症になりやすくなっている可能性があるからです。
まれですが、逆にピルを服用することでカンジダ症が発症しなくなった方もいます。ピルによって変化するホルモンバランスとカンジダ症は深い関係があるようです。
しかし、ピルの種類を変えることやカンジダ症に効く薬を服用することも、医師と相談しながら進める必要があります。まずは、カンジダ症について正しく理解する必要があります。
今回は、ピルを服用することでカンジダ症になる原因とカンジダ症の治療方法について解説します。
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ピルを服用するとカンジダになる原因

ピルを服用することがカンジダ症になる原因の1つと言われています。それは、ピルを服用することで卵胞ホルモンであるエストロゲンが抑制されている状態になるからです。カンジダ症は体内のホルモンバランスと深い関係性があります。
エストロゲンが減少すると体内の乳酸菌が減る
通常、膣内はph3.5~4.5の酸性の状態を保っています。その酸性の状態を保つために重要な役割を果たしているのがエストロゲンという訳です。
女性ホルモンであるエストロゲンが卵巣から分泌されることで、グリコーゲンを発生させます。膣内の常在菌(善玉菌)であるデーデルライン桿菌が、グリコーゲンを分解することで乳酸になり、膣内の酸性の状態が保たれています。
ピルを飲むことで低エストロゲン状態に
通常、生理周期によって卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。エストロゲンは排卵日の前に多く分泌され、月経時に減少します。
低用量ピルを飲むことで、体内のエストロゲンが低量で保たれます。これが結果的に乳酸菌を減らしてしまい、膣内の自浄作用が低下することでカンジダ症を引き起こしてしまう原因です。
ピルとカンジダ治療薬の併用は大丈夫?
膣カンジダ症の治療方法は、膣内に抗真菌薬である膣剤を入れ、カンジダ菌を抑制します。内診に抵抗がある人などは抗真菌薬である錠剤を飲む治療方法もあります。
また、外陰部に症状がある場合、クリームやジェルタイプの抗真菌薬を使用します。
ピルとカンジダ治療薬の併用については、治療方法・治療薬・治療方針によって異なります。治療方法によってはピルの効果を低下させることもあります。通常、経口抗生物質でなく、膣剤での治療でしたら併用できるケースが多いです。
低用量ピルとカンジダ治療薬の併用は、まずはかかりつけの医師やピル処方のある病院で診察・相談しましょう。
膣カンジダ症の症状について

カンジダ症は約75%ほどの女性が1度は経験すると言われており、かゆみや白いチーズのようなおりものが出るなど症状に多くの女性が悩まされます。
カンジダ菌自体は、健康な人なら誰ても保有している常在菌の1つで、疲れやストレス、体調不良や抗生物質の服用などで発症してしまうことがあります。
膣カンジダ症のよくある症状
カンジダ症を発症することで、よくみられる症状は以下の通りです。
- 膣やその周辺の強いかゆみ
- チーズ状の白く粘り気が強いおりもの
- 性行為中の痛み
- 排尿時の痛み
- 膣がヒリヒリしたり熱を帯びた感じがする
- 外陰部の発疹や発赤
まれに、エイズを発症している人が免疫低下していることで、口や食道に症状が表れるケースがあります。また、免疫低下している人が、心臓弁、脳、脾臓(ひぞう)、腎臓、眼などに感染が広がる侵襲性カンジダ症というものもあります。
膣カンジダと似た症状の病気と見分け方
膣カンジダ症以外にも外陰部にかゆみが出る病気(細菌性の膣炎やトリコモナス膣炎)があり、カンジダ症と思っていたけど実は違う病気だったということがあります。
病名 | 症状・治療薬 |
---|---|
膣カンジダ症 |
外陰部の赤みや強いかゆみ、白いチーズ状のおりもの ⇒抗真菌薬(塗り薬・飲み薬・膣剤) |
トリコモナス膣炎 |
外陰部の強いかゆみ、黄色っぽい、または黄緑色のおりものや悪臭 ⇒膣内の洗浄・抗原虫剤の服用・膣剤 |
細菌性膣炎 |
外陰部のかゆみ、灰色や青色に近いおりもの。魚が腐ったような悪臭 ⇒膣内の洗浄・膣剤の挿入 |
膣カンジダを発症しても、陰部やおりものの臭いの変化はほとんどありません。おりものから強い悪臭を感じたら、性病などの他の病気を疑ったほうがいいでしょう。
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カンジダが発症するピル以外の原因とは

カンジダ症はピル服用によりエストロゲンの量が抑制され発症する場合がありますが、ピルを使用しなくても発症するケースがあります。
免疫力低下
疲れやストレス、睡眠不足が原因で免疫力が低下し症状が出る場合があります。妊娠中や糖尿病、または風邪で体調不良の場合でも免疫力が低下することで発症しやすいと言えます。
免疫力が低下することで、カンジダ菌が増殖してしまうためです。
ステロイド剤の服用
ステロイド剤は免疫機能を抑制する働きがあるため、カンジダを発症しやすくなります。喘息や花粉症の治療でステロイド剤を使用している方は注意してください。
抗生物質の服用
風邪などで処方される抗生物質を服用することで、膣内を酸性に保つ役割がある『デーデルライン桿菌』も抑制してしまうことがあります。
ピルを服用するとエストロゲンを抑制し、その結果としてデーデルライン桿菌が減少してしまいますが、風邪薬などの抗生物質を服用することでデーデルライン桿菌が抑制されることがあります。
そのため、膣内の酸性環境が崩れてしまい、カンジダを発症してしまう場合があります。
カンジダは性行為で感染する?
カンジダ症は性行為で感染するのか?という問題です。
答えはYES。しかしどちらかというと口腔から肛門に広がるカンジダ菌が、キスやアナルセックスで感染してしまうという印象です。
それは、カンジダ菌は腸内で過剰増殖し口腔や肛門に広がるためです。現在はオーラルセックスが一般的となっているため、感染を防ぐことはとても難しいと言われています。
カンジダの治療方法について

カンジダ症の治療は膣の洗浄を行ったあと膣剤を挿入することが一般的ですが、内服薬や塗り薬もあります。
また、カビが増えにくい環境を作ることも大切です。通気性の高い下着を着用することや、デニムなどを極力避けること、ナプキンやタンポンはこまめに交換することを意識しましょう。
病院で検査・治療する
カンジダを初めて発症した場合は、必ず病院で受診しましょう。病院では、おりものを採取し顕微鏡で検出したり、おりものを培養し菌を特定します。
その後、一般的には膣内を洗浄し抗真菌薬が配合された膣錠を挿入します。外陰部にはクリームを塗ります。
また、病院に行く前に郵送で検査する方法もあります。自宅で検体を採取し郵送で検査できるキットがあり、性病を含めた様々な検査が可能です。
病院が最寄りにない場合や、内診に抵抗がある人は、まずは郵送での検査をしてみてはいかがでしょうか。
市販薬での治療法
カンジダの治療薬はドラッグストアでも購入できます。現在、膣内に挿入してカンジダ菌を抑制する膣錠と、外陰部のカンジダ菌を殺菌しかゆみを抑えるクリームが販売されています。
カンジダ症は再発しやすいため常備薬を購入しておく
実はカンジダ症は、再発する可能性が高い病気です。
それは、カンジダ菌は約70%の人が保有する常在菌のうえ、実は膣カンジダを再発している人は腸カンジダを発症している可能性が高いからです。
腸カンジダを発症している人の膣カンジダ再発率は50%ほどと言われいます。
膣カンジダが一旦治ったとしても、腸カンジダを発症しているため、腸から肛門までカンジダ菌が分布します。その結果、通常よりもカンジダ菌が多く常駐しており、また膣にカンジダ菌が移ることで再発の可能性が高まります。