PMS(生理前症候群)とは、月経(生理)が始まる数日間(3日~10日ほど)に起こる心と身体に起こるさまざまな不調ことです。一般的に月経がはじまることで、その症状もおさまる傾向にあります。
『Premenstrual Syndrome』という英語を略してPMSと呼ばれおり、Premenstrualは「月経前の」、Syndromeが「症候群」のこと。
症状緩和を期待して、食生活を見直したりサプリを飲んだりしている人も多いとのこと。また、症状がひどい場合は低用量ピルを用いて治療することもあります。
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PMS(生理前症候群)の症状と生活への影響
PMS(生理前症候群)は月経前に起こる体の不調を指し、月経前に始まり月経時に治まる不調が3ヵ月以上続き、さらに生活に支障をきたすくらいの症状がの場合にPMS(生理前症候群)と診断されることが多いといわれています。
PMS(生理前症候群)の症状は心と体の2種類あり多くの女性が経験している
ひとくちにPMS(生理前症候群)といってもあられる症状は人によっても異なり、大きく分けて心の症状と身体の症状に分けることができます。
月経前になると、胸が張ったり痛みを感じることや、下腹部が張ったり腰が痛くなる、頭痛やめまい、肌荒れやひどい眠気など..このような症状を感じたことはありませんか?
それに加え、月経前はイライラしたり、つい怒りっぽくなったり、憂鬱な気分になったり..などなど。
それが、生活をしているうえで特に困らないものなら単に『生理の前兆』といえるでしょう。一方で、生活に支障がでるくらい不快な症状の場合は『PMS(生理前症候群)』と呼び、おおよそ2~4割の女性が経験していると考えられています。
PMS(生理前症候群)の症状例
PMS(生理前症候群)の症状の代表例は以下の通りです。ご自身があてはまっている症状はありますか?
- イライラや怒り
- 抑うつ(気分の落ち込み)
- 不安感
- 気持ちの混乱
- 社会的引きこもり
- 眠気
- 自然に泣きたくなる
- やる気が出ない
- 集中力の低下
- さみしい
- 乳房痛や緊満(胸のハリ)
- 下腹部の痛みや張り
- 頭痛や眠気
- 浮腫(むくみ)
- 下痢や便秘
- ニキビや肌荒れ
身体に起こる一部の症状は、鎮痛剤などで緩和することもありますが、ココロの症状に関しては、誰にも相談できなくて一人で苦しんでいる方も多いとのこと。
PMS(生理前症候群)の症状は、心と身体への影響を与え、『誰とも会いたくない・話したくない』『仕事に行く気がしない・何もやる気がしない』など、本人の社会的な行動にも影響を与えることがあります。
PMS(生理前症候群)は個人差がある
PMS(生理前症候群)の症状や月経前の不快感の感じ方は、人によってさまざまです。人と同じだから安心、人と異なるから不安..というわけではありません。
実際に症状を感じていても、本人が特に気にしていなければ何も問題はありません。その症状を『月経(生理)が来る前兆』や『卵巣が働いている証拠』とポジティブに考えることができます。
逆に、月経前の症状が原因で、仕事を休むことになったり、人間関係がうまくいかない状況に陥ってしまう等の生活に支障が出る場合は、治療やケアの対象になります。
PMS(生理前症候群)の原因
ここでは、PMS(生理前症候群)の主な原因や傾向、またPMDDについて解説します。
PMS(生理前症候群)の原因とは?
PMS(生理前症候群)の症状は、図右側の黄体ホルモンが多く分泌される黄体期によく表れ、図左側の月経期におさまる傾向にあります。
『生理周期とは?安全日と危険日について』でも解説しましたが、生理周期には月経期、卵胞期、排卵期、黄体期があります。PMS(生理前症候群)は黄体期に症状が起こるため、、PMS(生理前症候群)も黄体ホルモンの分泌の変化に関係があると考えられています。
しかし、これまでの研究結果から、血液中のホルモン量とPMSの症状や程度には直接関係がないことも分かっています。つまり、ホルモン過不足やホルモンバランスの良し悪しがPMSの直接的な原因ではないということです。
研究結果によってPMSが起こるメカニズムや治療薬は部分的に分ってはいるものの、PMSの全てを解説できるような学説はいまのところありません。PMSの原因は、黄体ホルモンが症状に何らかの影響を与えていると考えられていますが、少なくとも症状に影響を与える原因は1つではないと分析されています。
黄体期とは?
排卵後の卵胞が黄体に変化することで黄体ホルモンを分泌します。子宮では、卵胞ホルモンであるエストロゲンに黄体ホルモンであるプロゲステロンが加わることで、受精卵が子宮内膜に着床しやすいような環境を整えます。つまり、受精卵(赤ちゃん)のために栄養を蓄え、排卵後に受精卵を迎える状態を整える期間を卵黄気を呼びます。
PMS(生理前症候群)は20代~30代が多い
実は、PMS(生理前症候群)は20代~30代の方に多くみられ卵巣機能や生理周期が正常な人にも起こります。
月経周期と連動するPMSは、月経がはじまる思春期から症状が始まる人もいます。また、年齢を重ねるごとに月経の回数も増加していき、症状が重くなっていく傾向があります。
一般的には思春期である10代はPMSの症状は比較的少なく、20~30代にかけて多く見られ、40代に減少傾向にあります。
PMS(生理前症候群)は女性のライフステージが影響することも
PMSは女性のライフステージの影響もあることが分かっています。
妊娠・出産経験のある女性の方がイライラする、怒りやすい、攻撃的になるといった心の症状があらわれやすいと分かっています。何かと悩みの尽きない子育てにおいても、こころに余裕がなくなり、それが影響してPMSの症状としてあらわれてくるとも考えられます。
働く女性の場合は、PMSが原因で仕事に集中できずにミスが増えたり、他人と口論したりすることが多くなってしまうことがあります。
専業主婦の場合は、イライラして夫や家族と喧嘩が多くなることや、憂鬱感から家事が手につかなかったりすることも。
PMDD(月経前不快気分障害)ってなに?
PMS(生理前症候群)のうち、特にこころの症状が重く、日常生活にとても大きな支障をきたす症状をPMDD(月経前不快気分障害)といいます。
PMDDは、PMSと異なる病気ではなく、PMSの重症したケースと捉えられています。一般的に、PMSの治療は婦人科や産婦人科で行うケースが多いですが、PMDDに関しては、うつ関連疾患と考えられており、精神科や心療内科に紹介されたり、精神科などと連携して治療を進めることもあります。
PMS(生理前症候群)の治療と低用量ピルについて
PMSの治療には主に低用量ピルが使われます。でもピルは『太る』や『なんだか怖い』というような印象がある方も多いのではないでしょうか。
PMSの治療にピルが効果的な理由
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンに分けられます。
エストロゲンとは、卵胞ホルモンと呼ばれており、生理が終わってから排卵期までに多く分泌され、子宮内膜を厚くする働きによって妊娠するための準備を整えます。
排卵時期になると、エストロゲンの分泌が減少し、もう1つの女性ホルモンであるプロゲステロンが分泌されます。プロゲステロンとは、妊娠しやすくするためのホルモンで、黄体ホルモンと呼ばれています。
この黄体ホルモンであるプロゲステロンが多く分泌される期間は生理前の約2週間ほどで、この期間をを『黄体期』と呼びます。
PMSの治療に使用される低用量ピルは、人工的に配合された卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合されています。ピルを正しく服用することで、体内に一定量の女性ホルモンが在住している状態が維持され排卵を抑制します。
低用量ピルで強制的に変化したホルモンバランスによって、脳は『妊娠している状態』と勘違いをするため排卵がなくなります。低用量ピルによって避妊効果があるのはこのためです。
PMSで低用量ピルを服用するメリット
低用量ピルは、正しく服用することでPMS(生理前症候群)の治療以外にもさまざまなメリットがあります。
低用量ピルは生理周期の治療の際も使用されることがあります。
生理が予定日より遅れたり早まったりして、旅行やプール、大切なイベントなどの予定を立てることが大変だったという経験をした方は多いのではないでしょうか?
ピルの種類にもよりますが、一般的にピルは毎日1錠のみ、これを21日間続けます。その後7日間の休薬期間をとり28日を1周期として服用します。この休薬期間の間に生理(消退出血)が起こるため、生理日がわかりやすくなります。
低用量ピルを服用することで生理痛の緩和も期待できます。生理痛は子宮内膜の収縮によって引き起こされますが、ピルを服用することで卵巣が休まるため、この収縮がほとんどなくなります。
低用量ピル(超低用量ピル)は、種類にもよりますが、PMSだけではなく月経困難症や子宮内膜症の治療にも使用されます。
低用量ピルを正しく服用することで排卵が抑制されるためほぼ100%の避妊効果を得ることができます。『彼が避妊してくれない』『避妊関して受け身になるのはイヤ』などなど、低用量ピルを服用することで望まない妊娠に対しても安心できます。
PMSで低用量ピルを服用する注意点
低用量ピルは毎日正しく服用することでその効果を得ることができます。飲み忘れがないように気を付けなければいけません。通常、1シート21錠タイプと28錠タイプがあり、28錠タイプはプラセボ錠(偽薬)が7錠入っています。
また、低用量ピルはまれに副作用が起こる場合があります。主な副作用は【頭痛・下腹部痛・吐き気・悪気(気持ち悪い)・不正出血・眠気】などがあります。
それから、ピルで一番気を付けたい副作用としては血栓症があげられます。低用量ピルを服用することで血栓症で死亡するリスクは10万人に1人程度といわれていますが、血栓症体質の方やたばこを吸う方は低用量ピルを服用できません。
女性特有の病気の治療で使用される超低用量ピルとは?
ピルには、超低用量・低用量・中用量・アフターピルなどホルモン量による分類があります。ピルの種類はさまざまで、自身に合うピルを選ぶことが大切です。
超低用量ピル | ホルモンの含量が30㎍以下のピル(ヤーズやルナベルULDなど)で、主に月経困難症や子宮内膜症の治療に使用されることが多く、治療目的のために処方される場合は保険適用になる。ホルモン量が少ないため副作用も軽減されている。 |
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低用量ピル | ホルモンの含量が50㎍未満のピルで、一般的にピルというとこの低用量ピルのことを指すことが多い。主に避妊や生理周期や生理痛の改善目的で使用されるケースが多く、マーベロンやトリキュラーが代表的。 |
中用量ピル | 中用量ピルはホルモン含量が50㎍で、主にホルモン治療や生理日の変更に使用されることが多いが、ヤッペ法という緊急避妊としても使用されることがある。 |
アフターピル | アフターピルは緊急避妊薬のこと。コンドームが破れた等の避妊に失敗した時に服用することで妊娠する確率を低下させることができます。 |
PMSの治療で低用量ピルの始め方
『もしかしてPMS(生理前症候群)かも?』と思ったら、我慢せずに婦人科等の医療機関に受診してみましょう。診察は少しめんどくさいって思うかもしれませんが、私生活に支障をきたすくらいの症状で、これから先も思い症状に悩まされているくらいなら、一度病院へ行ってみることも大切だと思います。
症状にもよりますが、PMSが疑われる場合は、一般的に婦人科や産婦人科がある病院で受診します。特に、ピルを服用することも考えている場合は、ピルの取り扱いがある医療機関に受診しましょう。
まとめ:PMSはまずは気付くところから
生理前になると、頭痛が起こったりイライラが止まらなかったり、何かしらの心と身体の変化を感じる女性は多いですよね。
それが気にならないくらいでしたら生理の前兆としてとらえておけば大丈夫かと思います。でも、もし私生活に支障が出るようでしたら、もしかしたらPMS(月経困難症)と診断される可能性があります。
人によって生理痛が軽い・重いがあるように、生理周期や生理前の症状は個人差があり、まずは『もしかしたらPMSかも?』と気付くことが大切です。あまりに辛い場合は、我慢せずに病院等で診察することも検討してみてはいかがでしょうか。